『うさぎの電報』

2002年7月公演
扇町ミュージアムスクエア協力公演 / 大阪市助成公演
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タイトル 『うさぎの電報』
日時
2002年7月19日(金) 19:30
7月20日(土) 15:00 / 19:30
7月21日(日) 14:00 / 17:30
場所 扇町ミュージアムスクエア
出演 武資子 / 船戸香里 / 谷川未佳 /
木嶋茂雄 / 小畑香奈恵 / 西宮久美子 / 山田一幸(unit theater爆烈幻獣) /
杉山寿弥(あうん堂) / 倉田操
作・演出 田中孝弥
舞台監督 / 美術 岡一代
照明 西岡奈美
音響 谷口大輔
舞台美術 B.flow
宣伝美術 天音比佐
舞台写真 石川隆三
ビデオ 坂口高志
演出助手 山根聡子
制作協力 柳澤尚樹 / 桝田聖美
協力 劇団ひまわり / 山下りき / はしぐちしん / 山本真梨子 / 田中真智子 /
鈴木俊啓 / 菅本城支 / 金哲義 / クオークの会
田中のささやき 先日、取材と称して、ボクは我が父と二人して兵庫県は生野銀山のさらに山深くにある黒川温泉と、その後ろに巨大な姿でそびえるダムを見に行って来た。温泉地のハナシは前回の公演『約束のヒト』で取り上げたので、黒川温泉は今回のお目当てではない。単なる入浴である。そう言えば、ボクは大きな浴槽を見るとついつい泳いでしまう。この前もニュージャパン・サウナの広い浴槽の中で平泳ぎをして壁にタッチ&ターンしてきた。
違う。ハナシをもとに戻そう。
今回のお目当てはその黒川温泉の後ろにそびえる『黒川ダム』の方である。少し風変わりな形をしている。ダムといえば、あの有名な黒部ダムのような、少し弧を描いた巨大なコンクリートの建造物の形を想像される方もおられるであろうが、ここ黒川ダムは違う。城の石垣のような風貌をしているのだ。巨大な石が一つ一つ積み上げられた格好で、放水口は、見上げて眺めるボクの方から左側に一カ所あるだけだ。ボクと我が父は、黒川ダムの頂上へと登った。
一転、水面は連なる山々の向こう、視界の限界を超えて広がっている。風が水面をかすめ、湖面はゆったりと、なびいている。あの「ゆったりさ」からして、おそらく水底はかなり深いだろう。たとえるなら、あのダムは大きな犬があまり吠えないのと、ちょっと似ているかも知れない。小さい犬は、すぐボクを見ると吠えてきよる。その際は、ボクもついつい犬とにらみ合い、視線を決して向こう(犬)が屈服するまで外さない。
違う、犬のハナシではない。ダムのハナシだ。
『黒川ダム』は巨大な浴槽のようにゆったりと水を蓄えている。しかしさすがに、あのダムの中では泳ごうとは思わなかった。
勿論、犬カキ泳ぎも考えなかった。
あらすじ ウサギは白く青く輝いて、まるで空を飛ぶように駆けていった。
「この原っぱの幽霊になって駆けめぐっているのかなぁ」
「見えた?」
「見えた」
ウサギはここの守り神。
私があの真っ白なウサギを見た日、私の知らない人達が、私の村を潰す話をしていた。
舞台は山村、ダムに沈む小さな村の公民館。
「土は地べたじゃない。地べたは誰のものでもないが、土はワシと毎日、話をしながら生きてきた」と、私のおジイさんは言っていた。
一つのかたまりを成していた、その土が、やがて乾燥し、ぽろぽろと欠けていく。
一人。また一人と、私の周りの人達が村を後にしていく。
進んでいくダム計画。強まっていく反対運動。どちらにも夢を託す人が村に居て、両方の人達の夢が叶うことはありえない。
「民主主義とは礼儀のことなんじゃないか」
元議員だった庄田先生のコトバの意味を、私は砂時計の砂が私の両手いっぱいに落ちてきて、なお両手から溢れかえる先も緩まず、零れ落ち続けるような年月をかけて、私にそのことを教えてくれた。
そして公民館がやがて、この村に住む人達の最後の砦になった。
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