曇り時々雨。
ちょっと落ち着いてみる。落ち着いて考えてみる。ボクは何でこんなに追い込まれているのだろうか。別にドイツ語学校に勉強するためにドイツに来たわけではない。ドイツ演劇を楽しんだり、ドイツの演劇人と話し合ったりして今後の自分に生かすために来たのだ。頭の中が学校中心になって、いつの間にか視野が狭くなっていた。勿論、ガッコの勉強もするけど、もう少しゆったり構えるようにしよう。
19時半よりMAXIM GORKI THEATER(マキシムゴーリキ劇場)にてFRANZ KAFKA(フランツ・カフカ)の『AMERIKA(アメリカ)』を観る。実に面白くない芝居だった。例えば、知らない人と話をする時、人は少しコトバを選んだり、丁寧に語ろうとしたりする。少しコトバを大切にするものだ。今回のカフカの上演にあたっては、上演用台本を執筆された作家さんも演出家さんも少し思い上がっていたように思う。『カフカのことはよぉ知ってますよ』と。勿論、その自信も必要だが、表現者は自信と不安の振幅の中で創作すべきものではないかとボクは思う。自信が裏目に出ているのか、同じドイツ人という身内意識が強過ぎるのか、カフカのコトバをぞんざいに扱い過ぎていたようにボクは感じた。
大きな欠落点は『カフカの本職であった“保険員”としての視座』だったように思う。会社などで起きた事故に関する保険を扱っていたカフカは、事故を処理する管理職周辺と、実際の労働現場の両方を査察する仕事をしていた。一つの事象を二つの観点から日常的に眺める環境にいたカフカの特徴は、本作の主人公Karl Rossmann(カール・ロスマン)がアメリカを旅する中で見た光景と重なる部分が大きかったように思う。